2015年2月開催の新春セミナーズフェスタを記念して、
『影響力の武器』(ロバート・B・チャルディーニ著)を用いた
実践心理学の事例をご紹介していきます。
影響力はモノの善し悪しに関係なく発揮されてしまうので、
良かれと思ってとった行動が、悪い影響を与えていることもあります。
この事例も「影響力の武器実践編」に詳しく収録されているのですが、
とある国立公園の事例です。
その公園には、
貴重で価値のある化石木のかけらがいたるところにありました。
そして価値あるがゆえに、
来園者がしばしば「お持ち帰り」をしてしまうことに
園のスタッフたちは頭を悩ませていました。
そこで、公園側は、
「残念ながら、年間14万トンもの化石木が破壊され、持ち帰られています。」
という看板を園内のいたるところに掲げたのです。
一見すると「悪いことはやめよう。」と伝える分かりやすいメッセージですよね。
このような啓蒙的なキャッチコピーは、どの業界でも見受けられます。
でも、この看板を掲げたことによって「お持ち帰り率」が増えてしまったのです。
なぜでしょうか?
それは、このメッセージによって「社会的証明のルール」が発動してしまうからです。
つまり、化石木を持ち去る行為が「いかに悪いか」よりも、
化石木を持ち去る行為が「いかに頻繁に行われているか」に意識が向いてしまうのです。
「みんながやっているから私がやっても大丈夫だろう。」
の心理が無意識に作用してしまうのですね。
また、価値ある限りある資源が毎年14トンも園内から減っている、
「いつかなくなる!」という「希少性のルール」も働きます。
結果、「お持ち帰り率」を減らすために掲げたメッセージが
全く逆の影響力を発揮してしまったのですね。
では、どのようなキャッチコピーを作れば、本来の目的を達成できたのでしょうか?
例えば、
「年間14万トンもの化石が盗まれていますが、
ルールを守り自然保護を大切にしている97%の大多数人に比べれば、
盗みを働く人は3%未満とごく少数」
であることを伝えるのはどうか、と博士は提案しています。
今回の例のように、伝え方ひとつで「影響力の武器」は、
自分を傷つける武器になる可能性もあれば、
伝えたいことの説得力を増す武器になる可能性もあるのです。
ぜひ正しい使い方を身につけて、有効に活用していきましょう!