「影響力の武器を『エコ活動』に活用した事例」[Vol.8]


 

2015年2月開催の新春セミナーズフェスタを記念して、
『影響力の武器』(ロバート・B・チャルディーニ著)を用いた
実践心理学の事例をご紹介していきます。

欧米のホテルでは一度使ったタオルを再利用してもらうために
様々な取り組みがなされています。

よく使われるのが環境保護の重要性を訴えることです。

「環境を守るため、タオルの再利用にご協力ください。」

と洗面所に表記することで、再利用の協力依頼をしているのです。

更に一歩踏み込んで、
協力への具体的なメリットを加えているところもあります。

「もしお客様がタオルを再利用して頂けたら
ホテルは節約されたエネルギーの一部を環境保護団体に寄付します。」
というように。

確かに、団体に寄付ができるという具体的なメリットを伝えた方が
お客さんも協力してくれるような気がします。

しかし、上記2つのメッセージでどの程度再利用率が変わるのか、
を調べてみたところ、
ほとんど効果に差はないことが分かりました。

一体なぜでしょうか?

それは、「再利用してくれたら、寄付するよ」というメッセージは、
「お客さんが私たちに先に何かをしてくれたら 私たちはお返しをしてあげます。」

と先に相手に「ギブ」を求めるメッセージだったからです。
ですから、お客さんにとってみれば必ずしも協力する義務は負いません。

そこで、ロバート・チャルディーニ博士は
より多くの協力を得るためにメッセージをこう変えてみました。

「当ホテルは環境保護団体への寄付を行っております。
タオルの再利用にご協力ください。」

このメッセージを書いた場合、他の2つの方法よりも45%も高い結果が出ました。

なぜこんなことが起こったのでしょうか?

実はこのメッセージをもっとわかりやすく言うとこういうことです。

「ホテルはすでにお客様に代わって寄付を行っております。
 あなたはタオルを再利用することによってこの行為に報いてください。」

このメッセージも、先ほどのメッセージも、

・タオルを再利用してほしいこと
・売上の一部を環境保護団体へ寄付すること

この2つに関して伝えている内容は変わりません。
しかし、大きな違いは、
「先に何かを与えているかどうか」です。

これにより、宿泊客は
「恩を受けたことに対して何かの形で報わなければいけない」

とい「返報性のルール」が働いたのです。

この実験から分かるのは、
お願いする内容を全く変えずに、ただ言い方を変えて「返報性のルール」を
発動させただけで協力者の数が約半数近く増えるということです。

これが心理学の知識と言葉が持つ力です。

たった一言メッセージを変えるだけで
反応率や売上結果を大幅に高めることができます。

ぜひ参考にしてみてください。