「相手に決断を促す『決めの一言』」[Vol.5]


 

2015年2月開催の新春セミナーズフェスタを記念して、
『影響力の武器』(ロバート・B・チャルディーニ著)を用いた
実践心理学の事例をご紹介していきます。

何かおいしいご飯食べたいなら、
がらがらのお店よりも行列のお店の方がいいですよね。

でも、おそらくあなたは行列に並ぶこと自体は好きではないでしょう。
どんどん早く進みたいはずです。

そんな中、あなたの前に「割り込み客」が表れたら…。
もちろん気分を害すはずです。

でも、「割り込む方法」を変えるだけで、気分をあまり害することなく、
ついつい「どうぞお先に」と言ってしまう魔法の言葉があるとしたら、
どうでしょうか。

行動学者であるエレン・ランガーはこのような面白い実験をしました。

コピーを待っている列に並ぶ人たちに
「急いでいるので5枚だけ先にコピーさせてください。」
と言ったところ、94%の方が譲ってくれました。

一方、「5枚だけ先にコピーさせてください。」
と言った場合は、60%の方しか譲ってくれませんでした。
(それでも多いと思いますが…)

でも、ここがこの実験の肝なのですが、
「コピーしないといけないので、5枚だけ先にコピーさせてください。」

とお願いしたところ、なんと93%の方が譲ってくれたのです。

並んでいる人は全員、
「コピーしないといけないから」並んでいる訳で、
「コピーしたいこと」は順番を譲ってもらう理由にはなりません。

でも、93%の人が譲ってくれたのですね。

面白いと思いませんか?

つまり、理由そのものではなく、
単純に「?ので」という言葉に反応して行動を変えたのです。

もちろんこの実験は、
「5枚だけコピーを先に取る」という非常に小さなお願いだからこそ、
成立しました。

行列のできるラーメン屋で、
「おいしいラーメンが食べたいので、順番譲ってください。」
とお願いしても、拒否される可能性の方が高いでしょう。

事実、コピー機の実験には続きがあります。

「20枚コピーをさせてくれ。」とお願いした場合は、例え「?ので」を
入れても入れなくても、譲ってくれる人の割合は変わりませんでした。

しかし、「急いでいるので」とまとも?な理由を添えた場合には、
その割合は倍増しました。

何かをお願いするときには、
そのもっともな理由を添えてお願いをすることで、
相手が承諾してくれる確率が格段に上がります。

ぜひそのことを意識して、お願いをしてみてください。